GRM blog : 新進芸術家海外研修制度
日々のほとばしりから市井の美味そして旅のしおりまで
2016年11月22日16時24分
Third Rail Projects「The Grand Paradise」を観劇。今回のNYC滞在の目的であるイマーシブ・シアター体験は、期待を裏切らない面白さだった。なるほど、こんな表現があるのか。感動とも高揚とも違う、理性と性分の間で心が往復させられてしまう仕組みはまだまだ見つけられるのだと、とても勉強になった。
会場の入り口からしてまったくわからなかった。
作品のテーマである一期一会が時間の構造になっている。これからの2時間に何がおきるかを知っているのは作り手側で、僕らは観客はケージに放り込まれたひよこみたいに、あっちやそっちで起こるそれについていくしかない。始まってすぐにフォローミーと肩を叩かれて、僕と演者の一対一で連れて行かれた先が、ベッドがぽつねんとある4畳くらいの部屋だった時は、興奮の最頂点だった。
なにが起こるかわからない。しかしながら、それは演者側も同じ。そういった均衡の上でなりたっているのが、このイマーシブ・シアターの醍醐味だと思う。僕ら観客が接着剤になって、内容推移と空間設計のパズルのピースが生々しく組み立てられていくのを感じて、これはさすがだと演出の腕に舌を巻きました。
ただし、批評的な観点では全く楽しめないと思う。超越した美はありません。演劇特有の仮設感からくる、いまに没入できるか否かというところで紙一重のジャッジはあるかと思います。
とはいえ、あの構成と演者のやりきり度合いには、決して安くはないチケット代を払う価値はある。帰ってきて自分が体験したシーンを書き出してみて思ったのは、あの一対一が実はとても有効だったということ。たしかに彼女に対する妙な信頼が芽生えていた。
最後にひとつ。入場にはIDが必要ですので、行かれる方はパスポートの持参をお忘れなく。
NYCではお酒をオーダーするときに、お店によってはIDの提示を求められる。本作中にお酒が振る舞われるシーンもあり、また自分自身の身分を証明をすることで観客としての責の顕示化の役割も果たしているのだろう。僕はパスポートを持っていなかったので、Facebookのプロフィールで生年月日を証明するという荒業で乗り切った。
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