NO、NOばかりじゃなく、時にはYESを。ワークショップを終えて

うららかな春の日差しが眩しい先週土日、横浜は野毛にある「急な坂スタジオ」にて2日間のワークショップを開催しました。テーマは「3人」。4時間のワーク中に、存在から生まれる以心伝心を築きあげ、最終的には3名1チームとなって発表する、という主旨でした。

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そもそもなぜ「3人」か。

一言で申しますと、2人より断然面白くて、4人だと多すぎるから。

ワークショップという数時間の中で、複数の意思の重りで紡いでいく表現は、引いては即興です。ただ、どうしても即興は内にこもりがちになる。特に2名での即興は顕著で、これは本番舞台でも良く見られますが、ともかくつまらないものが多い。「舞台を見に行ったんだけど、わからなかった」ってのは、ほとんどこれ。断言しちゃったけれど。あとは、他人のための笑顔ってのも(僕には)つまらないのですが、これはいずれの機会にでも。

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2名の場合、たぶん1つの相手だけを強く意識しているから、対あなた、そしてわたしという意識が2人だけの世界に彼らの存在を収めてしまう。その世界はすっかり閉じてしまっていて、こちら側(観ている側)からすれば、彼らがとても遠くに在るような気になってしまう。なんだか彼らだけ楽しそう、ご勝手にどうぞ。なぜ私はここに今居るのかわからない=つまらない訳です。

それが3名になると、1人は2つの意識を同時に汲まなくてはなりませんから、どうしたって意識するアンテナの範囲が広がる。その広がりは、見ているこちら側(観客)にまで流れてくる。だから興味が呼応できる。

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現実的なお話をしましょう。

部屋に入ってから数時間の内に行ったことが、コミュニケーションをとるための共通言葉になります。それはウォームアップの手首をくにゃくにゃさせることだって、ストレッチで屈伸することだってそう。たまたま出会った今日の、これまでの数時間を振り返り、自分と相手の言葉に引き上げる。双方の引き出し、いわば演劇なのかダンスなのか、モダンなのかバレエなのか、を探ることなんてどうでも良い。もっと言えば、自らを他人の身体にしなくちゃ会話は出来ない。

そして、3人の場合には、伝わりやすくNOといえる。2人の動きに追従しない、というのがNO。あなたから、別の1人に行ってしまう私もNO。でも時にはYESと言ってみる。片方の動き、タイミングを自らに取り入れる。そんな動きの会話が出来てきて、今度は自らが発して相手についてきてもらうのか、それともYESと言い続けるのか、どうやって離れていくか。そのスイッチがどんどん移動していくと、もっともっと面白くなる。

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ダンスであればフリ、演劇であれば台本という決まり事をなぞるだけでは、練習場と何も違わない。ある方はロボットのようだし、自己満足の極北に飛んでいってしまう方も多くおられる。それは、人前に立つ=何かを表現するという責任の負い方じゃあないと思います。

わかってもらいたいとか伝えたいとか、そうゆう意の所欲ではなく、YES / NO を個として伝えきる力が、他の2名や、引いては観客に伝播していくことこそ、表現の根幹だと思っています。

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タグチヒトシ
演出家。パフォーマンスグループ GRINDER-MAN代表。リアルタイムなライフログはFacebookにて。YouTubeにてダンス映像 Dance Brew を配信中。