書類作りで深まる思考のスケッチ

年末年始と絶え間なく仕事してまして、今年がやって来た明確な区切りを感じることなく今日も日が暮れた。なにをやっているかというと、打合せ20%にリハーサル30%、そして残り半分50%が書類作り。

昨年もよく書類を作った。企画書から構成表や指示書、演出台本からテクニカルライダーまで、A4で1000枚はゆうに超えているだろう。でも嫌じゃない。我ながらタフになったものだと思う。

思考のスケッチを深めるには書類作りがいい。書類は自分のためではなくて、誰かになにかを説明するためにある。それゆえ客観的な正当性を盛り込む。企画の主旨が伝わりやすいキーワードを必死になって選定する。目的を具体的な事象に落とし込む。細部を定めて全体を組み立てる。

昨年末の二子玉川ライズでのパフォーマンス「MARBLE」の実施に際しては、しっかりと運営マニュアルを作成した。正直なところ運営マニュアルといった書類の有用性を感じたことがなくて、これまでは誰かにおんぶにダッコだった。一度作ればコツがわかるからとお尻をまくって、重い腰をあげた。

昨年の11月に東京で開催された展示イベントで起こった事故を受けて、GRINDER-MANのところにも東京都と文化庁から注意喚起の文書が届いた。僕らのような小さい会社にも連絡があったくらいだから、イベント業界やアート業界など、テンポラリーに大勢を対象にする催事の実施を担う職域には相当の衝撃があったかと思う。実際になにがおこったかを想像していたたまれなくなったのは、僕だけではないはずだ。

物事が進んでいく段階は3ステップある。計画、スケッチ、実施、この3つ。仕事とはこの3つがサイクルして進む。全体の進行とともにこのステップは細かくサイクルしていき、仕事とはサイクルが着地してようやく成し遂げられるものだ。

運営マニュアルはといえば、本番当日にむけたスケッチと策定の往復作業である。書類を作りましたので、これでお願いしますね、ではない。たたき台を作って各部署に調整をお願いして、あわせて決定事項を周知する。すべきことの明示、わがままの見極め、奔走と切り捨てがある。

先の事故を受けて僕が心配しているのは、新たな規定の創出が同意されてしまうことだ。「再発防止を徹底すべきでしょう」「そうですね、具体的にはなにを?」「イベントの集客規模によって警備人員を何名そろえてましょう」「そうしましょう」。そんな具体的な目標が誰かによって設定されてしまうことを懸念している。

不安に対する予測を、規定や取り決めをもってして解決しようとするのは逃げ腰だ。仕組みや頭数よりも、必要なのは不安を引き取る胆力とまとめていく腕だ。

タグチヒトシ
演出家。パフォーマンスグループ GRINDER-MAN代表。最新情報はFacebookにて。2018年2月「SEE SAW」シアタートラムにてパフォーマンス公演。どうぞお越しください。