茶封筒の中身は

先週金曜日夕刻、とあるお店のカウンターにて一人酒と洒落こみつつ、Twitterでつぶやきはじめた。

昨日から喉痛く。朝方まで寒さからか眠れず。昼にほうぼうの体で床から這いだし出社。事務所のビルは5階建てで、そんなに大きくない。入口の郵便受けを覗くのが日課、というか僕の一日の始まりだ。そろそろ年賀状も落ちついた今日、見慣れない郵便物が入っていた。

会社の郵便受けに入る半分以上は、ダイレクトメールのたぐいだ。開封をせかすように、どれも皆きらびやかに訴える。それが珍しかったのは、ただの茶封筒だったから。表には手書きの宛先だけ。裏には、初めてみる住所と名前。神戸からだ。

ここで、つぶやくのをやめてしまった。
この続きを書いて良いのか、なにか宙ぶらりんを感じて、筆(指?)を止めた。

なにが宙ぶらりんなのか。ここ数日悩み、まずはきちんとしてからだと答えを出して、昨日お礼状をしたためた。

中座も宙ぶらりんなので、せっかくですから “つぶやいている” 体で続けます。

エレベーターで上がる途中、その茶封筒の手触りを確かめる。雑誌にしてはひとまわり小さいし、パンフレットにしては厚すぎる。もう一度送り主を確かめるが、やはり見知らぬ名前。いつかの展覧会のカタログが、こんな大きさだったかしらん。そんなことを思いながら、事務所につくなりエイヤッと破ってみた。中からすべり出てきたのは、手紙と冊子。

冊子の表紙には「MUSTANG KB Kobe Biennale 2009」、そして送り主のお名前が印刷してある。パラパラとめくると、昨年神戸で公演したグラインダーマンの写真。これは写真集か。遊び紙のある、無線綴じの製本、約50ページ。しっかりとした作りだ。

遊び紙とは、表紙と中身を挟む紙のこと。無線綴じとは、背をボンドで接着した製本方式。

『初めまして。不躾なおたよりをお許しください…』から始まる文面に続くのは、たまたま神戸ビエンナーレでパフォーマンスを見たこと。なんだかおもしろそうなので写真を撮り始めたこと。その後に、パンフレットの小さい文字からグラインダーマンという名前を知ったこと。

『とてもスピーディーで、スマートで美しいパフォーマンスに、息つく暇なくたのしませていただき、感動いたしました。…私は写真を趣味とし…今回撮らせていただいたものを、フォトブックにまとめさせていただきました。』 僕も、素直に感激してしまった。つぎの舞台もがんばろう、そう思うと喉の痛みが消えた。

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写真をセレクトし、このような書籍の形するのには、それなりの手間や費用がかかるのだろうし、なによりもその心尽くしが伝わってきて、心の底から感服してしまった。
グラインダーマンだけなのかもしれないけれど、お客さんから直接感想を聞くことは稀。いつの日か、トークショーじゃない、しゃべり場みたいなことをやってみたいと考えています。

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タグチヒトシ
演出家。パフォーマンスグループ GRINDER-MAN代表。リアルタイムなライフログはFacebookにて。YouTubeにてダンス映像 Dance Brew を配信中。